親が認知症に。親名義の不動産を売却するには?≪コラムより≫



人気の売却サイトのコラムを紹介します!

親が認知症に。親名義の不動産を売却するには?

 

親が認知症に。親名義の不動産を売却するには?

 

「親の認知症が重度化したため施設に入ることに。そこで、費用に充てるため、親名義の不動産を売却したい」。近年、そうした需要が高まっています。しかし、たとえ親のためであっても、勝手に不動産を売ることはできません。 このように判断能力が衰えた本人に代わり、法的なサポートを行うのが「成年後見人」です。親が認知症と診断された際の成年後見人の役割と、選出するときの注意点を解説します。

■成年後見制度とは

「実家は家族共有の財産」という意識を持ちがちですが、売却を考えたとき、不動産の名義が親の場合は本人の意思確認が必要になります。親が元気なときなら、話は簡単です。親の「売却します」という意思が確認できれば、息子、娘が書類準備や手続き、立ち合いなどを代行することができます。

不動産の売却は、売主様と買主様、仲介業者、また、買主様が住宅ローンを利用する場合は金融機関の担当者、そして司法書士が立ち会って行われます。不動産の名義人である親が寝たきりなどの状態であっても、「売却します」という意思がしっかり確認ができれば契約は有効です。

逆に、身体は健康そうに見えても、発言や行動などから「意思確認ができない」と司法書士が判断した場合、契約や決済を止めることができます。財産の処分において「本人の意思」はとても重要なわけです。

認知症と診断が下されると「判断能力が不十分」とされてしまうため、財産を簡単に処分することができなくなってしまいます。そこで、利用されるのが「成年後見制度」です。

これは、認知症のほか、知的障害や精神障害などが原因で判断能力を欠く人のために「成年後見人」と呼ばれる援助者を選任し、法律的なサポートを行うもの。選任された成年後見人は、本人に代わって財産管理や遺産分割の協議、各種契約などが行えます。

成年後見人は、本人の判断能力の状況によって3種類に分類されています。本人の判断能力が全くない場合の「後見」、本人の判断能力が著しく不十分な場合の「保佐」、そして、本人の判断能力が不十分な場合の「補助」(判断能力が不十分)がそれで、それぞれの権限や職務の範囲は家庭裁判所が決定します。

成年後見人には、親族をはじめ、弁護士、司法書士、社会福祉士、法人、市区町村長がなることができます。

■後見人の選定から不動産売却まで流れ

成年後見制度を利用する場合、申し立ては家庭裁判所が行います。申立書類に記載された成年後見人候補者が適任であるかどうかが審理され、候補者以外の弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職、法律や福祉に関する法人などが選任される場合もあります。

成年後見人は、行った職務の内容を定期的または随時、後見が終了するまでの間、家庭裁判所に報告する義務があります。また、家庭裁判所が必要と判断した場合は「後見監督人」を選任して、後見人に対する監督事務を行わせることがあり、その場合、成年後見人は行った職務の内容を定期的、または随時、後見監督人に報告しなければなりません。

成年後見人の選任から不動産売却までにかかる期間は、ケースによりますが、2〜3カ月程度かかります。また、売却したい不動産が実家(居住用不動産)の場合、家庭裁判所の処分許可が必要になるため、別途申し立てを行います。

では、後見人選定から不動産売却までの流れを見ていきましょう。

1.不動産の名義人の所在地を管轄する家庭裁判所に「成年後見制度開始」の審判を申し立てます。

2.家庭裁判所が「医師による鑑定が必要」と判断した場合、家庭裁判所から依頼された医師が本人の意思能力を評価し、診断書を作成します。この場合、医師への鑑定料(7〜9万円)が必要になることがあります。

3.後見人を選定し、審判が確定します。

4.不動産会社と売買契約を締結し、買主様を探します。

5.不動産名義人に代わり、成年後見人が買主様と売買契約を結びます。

6.家庭裁判所の許可を申し立てます。このとき、売却した資金の使い道など、明確な記載が必要になります。

7.家庭裁判所から許可を受けた後、売買代金の精算と所有権移転登記が行われます。

■まとめ

財産を処分するには本人の判断能力が必要です。判断能力が確かなうちに、財産の管理を第三者に委託する方法があります。また、判断能力の衰えに備え、あらかじめ本人が「任意後見受任者」を選び、公正証書を作成して任意後見契約を締結しておく方法もあります。

とはいえ、これらはすべて本人次第で、家族など周囲の人たちが働きかけをするのは困難でしょう。医師による認知症の診断を拒む人も多く、また、認知症発症後に取れる手段はとても限られているのが現状です。成年後見制度に対する理解を深めるとともに、仲介を手がける不動産会社の経験が重要になります。実家の不動産売却に際しては特に、不動産会社を慎重に選びましょう。もし不安な点があれば、経験豊かな当社までお気軽にご相談ください。